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2015年03月16日

●初夏のドイツ巡り⑥ヴェレダの農園にて(服部理恵)

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*ヴェレダ自社農園の入口

ツアーの時期によりますが、6月のツアーは特におすすめです。初夏のさわやかな気候、鮮やかな緑と咲き誇る花々に魅了されます。
前回、ご紹介いたしましたハイデルベルク城のさらに上部にある山頂もジギタリスの群生などで驚きましたが、今回ご紹介するのは、日本でも有名なオーガニックコスメのWELEDA(ヴェレダ)の自社農園です。
今回は2014年のガーデニングエキスポが開催されており、特に賑わっていました。とにかくスケールが大きいです!

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*ヴェレダ社の野中潤一博士による講義

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*根茎標本。表面を板で覆っており、
 観察するときは外して根茎を見ることができます

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*広大なカレンデュラの花畑。
 カレンデュラ(きんせんか)キク科
 外用に使われることが多く、
 殺菌・抗炎症に力を発揮します
 ハーブティとしても発汗等で飲まれています

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*花弁の色が濃く、いきいきしています

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*コーヒーの木。枝にコーヒーカップを
 ディスプレイすることでわかりやすく
 ユーモラスに展示しています

たくさん見た中で、一部しかご紹介できませんが、ヴェレダの薬草園だけでなく、ほかにもたくさんの薬草園がドイツにはあります。
今年はまだどこをまわるかはわかりませんが、ぜひ本場の薬草園を体感してみませんか?
また写真をたくさんとって、アルバムを作るもよし、日本で写真をもとにスケッチするもよし、会社でプレゼン報告するもよし、その工夫はあなた次第です。私たちと一緒にたくさんの薬草を見に行きましょう。
お問い合わせお待ちしております!

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*こんなイケメン庭師にも会えるかも?

2015年02月22日

●初夏のドイツ巡り⑤格別な眺めと食事(服部理恵)

ハイデルベルク市街へ戻り、自由時間です。
私は、所長らとともにハイデルベルク城の、さらに上にロープウェイで登ってみました。
そこでは、山に咲く薬草たちに出会いました。

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*ロープウェイ駅からの眺め

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*ジギタリスの群生

写真を取り損ねましたが、野うさぎを見ることができました。
その後皆様と合流し、夕食です。待ちに待ったシュパーゲル!(ホワイトアスパラ)です。
太くて、みずみずしく、風味豊かです。オーランデーズソースとともにいただきました。

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2015年01月06日

●初夏のドイツ巡り④大学の中の薬局(服部理恵)

ハイデルベルク大学内の薬局です。
視察旅行では毎回訪れています。

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町の薬局の卸の機能も兼ね備えているため、大規模です。
たとえば、自動ピッキングシステムもすごい大きさです。

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パソコン制御されて、在庫も一目でわかります。
もっと見たい方は、今年の視察旅行で!

こちらは、薬学生の実習の様子です。
日本の実習とは違い、与えられた課題に対して、必要な器具類も
自分たちで揃えます。
なぜなら薬局を運営するようになると、毎日定性試験をしなければならないからです。
制限時間内に終えるため、学生さんの必死な姿が見られました。
ちなみにこの方の課題は、定性試験です。
課題はそれぞれ違うものが与えられるそうです。

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2014年11月04日

●初夏のドイツ巡り③ハイデルベルクの散歩道(服部理恵)

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*「哲学者の道」からの眺め。
 徒歩で往復約1時間半、とてもよい運動になりました

旅の二日目、朝5時半に起きてお散歩に行きました。ホテルを出て、まだ起きていない街中を通り、向かった先は「哲学者の道」です。
ハイデルベルクは多くの哲学者や芸術家が愛し、この街を称えています。ヘーゲル、カント、ベンダーリン、ショパンそしてゲーテ…。 旅情あふれるこの街を眺めながら、思索に耽ったことでしょう。
「哲学者の道」と称して山道と遊歩道が、お城の対岸ハイリゲンベルクという445mの山を縫うように整備されています。

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*「哲学者の道」の途中で見つけたラベンダー

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*さて、朝のセミナーです
 ドイツの医療業界についてしっかり学びます

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*皆さん真剣な眼差しでした

2014年10月14日

●初夏のドイツ巡り②休日当番の薬局訪問(服部理恵)

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*訪問先のGreif Apotheke

訪れた6月はサマータイムの時期になります。写真でお分かりのようにこの明るさですが、実は夜の22時頃です。
休日当番の薬局(Greif Apothekeさん)を訪問しました。ひっきりなしに患者様が処方せんをもって訪れています。この地域で営業しているのは当番の薬局だけなので、各薬局に貼られている当番表をみて、患者様がやってきます。

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*薬局内には薬局のミニチュアや古い薬壺が置いてあり
 古風な内装ですが、清潔感があります

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*こちらの薬局は奥行がある調剤室で、引き出しには
 医療用医薬品が入っています
 棚上にはオーガニックコスメなどが置いてありました

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*こんなおしゃれなドールハウスを
 薬局に置いてみたいものですね


2014年09月12日

●初夏のドイツ巡り①ビールの替りはコレ!(服部理恵)

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*皆それぞれに飲物でくつろぐ 

私は3回目となるドイツ薬学視察ツアーですが、なんといってもこの時期が一番おすすめです。気候は安定し、お花は咲いてそれは美しいです!(冬も素晴らしいですよ!)少しずつですが、ツアーの中でおいしかったもの、勉強になったことなど報告していきたいと思います。
まずは、ドイツに到着してから...とりあえずビール!というところですが、しかし私はビールが飲めないので、アップルサイダーで乾杯!ドイツではリンゴが多く栽培され、ソフトドリンクには必ずリンゴのジュースがあります。
さて、下の写真を見てなんでドイツでハンバーガー?と思ったかもしれませんが、ハンバーガーはもともとの起源はドイツで、ドイツの国民食なのです。すごいボリューム、あふれ出る肉汁! 付け合せはフライドにんじんです。ちょっと意外な感じはしますが、日本の人参とは少し異なる触感で、甘くておいしかったです。ドイツへ訪れた際はぜひ、食べてみてください!

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*重厚なハンバーガーとフライドにんじん

2014年08月18日

●クリスマスマーケットのおいしいもの巡り⑥番外編(服部理恵)

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*病院の総合受付の周りに、様々なブースができています

クリスマスマーケットのおいしいものをご紹介していましたが、クリスマスマーケットに行きたくても出かけることが困難な方たちがいます。それは、病院に入院されている患者様です。
ハイデルベルク大学内にある病院では、総合受付のあるフロアに入院患者様用のクリスマスマーケットを用意していました。
扱っているものは手作りものばかりで、洋服やおもちゃ、クリスマスオーナメントなどのブースがたくさん並び、入院患者様やご家族が楽しそうにお買いものをしていました。

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*手作りの木のおもちゃを扱うブース

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*おじさんの手作りだそうです

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*チョコレートやキャンディを扱うところもありました

大きな病院だからできることかもしれませんが、とても嬉しい心遣いですね。

2014年07月31日

●クリスマスマーケットのおいしいもの巡り⑤フルーツのチョコがけ(服部理恵)

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よく日本のお祭りでも見かける、チョコバナナ・・・のようなものが、ドイツのクリスマスマーケットにもありました。フルーツを串に刺して、チョコレートコーディングしてあります。寒い中、人ごみの中でも食べやすいし、美味しかったです。
中身は、ぶどうやパイナップルなどです。中には、リンゴ飴ならぬ、リンゴチョコもありました。美味しそう・・・でした。
手作りのトリュフチョコレートのお店もありました。サンタさんのチョコレート像も鎮座しています。やはりヨーロッパのチョコレートは絶品です。

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2014年07月25日

●クリスマスマーケットのおいしいもの巡り④ニュルンベルクソーセージ(服部理恵)

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ドイツはソーセージが美味しいことは有名ですが、ソーセージと一言で言っても
地域ごとにいろいろな特徴があります。
今回はニュルンベルクソーセージをご紹介します。
言わずと知れたニュルンベルクの名物料理ですが、ほかのドイツソーセージと比べて小ぶりなニュルンベルガーには、西洋ワサビがよく合います。当地では「ニュルンベルガー」の品質と伝統を守るため、ニュルンベルク市内で正しく製造されたソーセージのみがその名を名乗れるそうです。考えてみれば当然のことですが、レシピを真似て名を騙るお店がでるほど人気の高いソーセージということでしょうか。

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ニュルンベルクのクリスマスマーケットには、もちろんこのソーセージの屋台がたくさん並んでいたので、私もお腹がいっぱいでしたが、誘惑に負けてしましました。
パンに3本のソーセージを挟んでくれて、2ユーロ(約250円ほど)
ビールによく合いそうです!(私は飲めませんが・・・)

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レストランでも食べてみました
チェコとの国境近く、ドイツ・エルツ山地と呼ばれる地域ではかつて錫の採掘が盛んに行われ、錫食器などが作られていました。
そこで、ソーセージを錫の食器に盛り付ける習慣があるそうです
ここのレストランでは、ハート型の錫のお皿にのってきました!
下はザワークラウト(キャベツの酢漬け)です

2014年06月28日

●クリスマスマーケットのおいしいもの巡り③プレッツヒェン(服部理恵)

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*壁に並んだクッキーの木型

クリスマス前のアドベント期間中になると、ドイツの家庭ではクッキーを焼きます。
シナモン、クローブ、ナツメグなどのスパイスが効いたパリッとした食感のクッキーです。焼き上げたクッキーは大きな缶に入れて家族で食べたり、袋に詰めて友人にプレゼントします。
クリスマスマーケットには、このプレッツヒェンはもちろんですが、このクッキーづくりに不可欠な木型を売っているお店が何軒もあります。クリスマスを題材にした模様のものがほとんどです。
今回は購入しなかったのですが、非常に後悔しています。次に訪れたらいろんな種類を購入し、うちで作ってみようと思っています。

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*たくさんのクッキーが売られている出店

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*ホテルのロビーにもプレッツヒェンがふるまわれていた
 美味しくて、コーヒーやホットワインともよく合います

2014年03月18日

●クリスマスマーケットのおいしいもの巡り②レープクーヘン(服部理恵)

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*アイシングでデコレーションされたレープクーヘン
 首から下げたり、家に飾ったりします

日本ではあまり知られていませんが、ドイツで有名なクリスマスのお菓子の一つにレープクーヘンがあります。
14世紀にニュルンベルクとその周辺において、男子修道院で焼かれていたそうですが、
今は地域によって様々な呼称とバリエーションに富んだものになっています。
中でも、ニュルンベルクのものは8cm位の丸く平たい形(日本の丸ぼうろのような形)で、アイシングやチョコレートコーティングされたものが一般的です。
また、レープクーヘンを使ってお菓子の家も作る家庭もあるそうです。

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*ニュルンベルクのレープクーヘン

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*ホテルに飾られたお菓子の家、レープクーヘンと
 次回③で紹介するプレッツヒェンで作ってあります

●クリスマスマーケットのおいしいもの巡り①シュトレン(服部理恵)

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ドイツのクリスマスのお菓子の代表といえばシュトレン(Stollen)です。
ザクセン州、ドレスデン(もっとさかのぼると同州 ・ナウムブルグ)がこのお菓子の発祥の地だと一般にいわれています。
日本でも、クリスマスシーズンになるとパン屋さんなどで見られるようになりましたね。
酵母の入った生地にレーズンやオレンジピール等のドライフルーツを入れて焼いたケーキで上から雪のように白い粉砂糖をたっぷりかけます。
クリスマス前のアドベントの間に薄く切って食べますが、私には少々重めな味わいです
今回のツアーでは、レストランでのデザートとしていただきましたが、クリスマスマーケットでも売っていました。温かい紅茶やコーヒーと一緒にいただきたいですね。

2013年04月15日

●南独クリスマス巡り⑥グリューワイン(城戸真由美)

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*グリューワイン屋の屋根のデコレーション
(シュトゥットガルト)

クリスマスマーケットといえば“グリューワイン”。これを飲むと、一層クリスマス気分が盛り上がってきます。数種類のハーブとオレンジやレモンを加えて、沸騰しない程度に温めたワインの鍋からは、甘くてスパイシーな香りが漂っていました。ワインのマグカップには、その街の風景や名物、そして訪れた年号が描かれています。デポジット制で、ワインを飲んだ後にマグカップを返却すれば返金(2ユーロ程)してもらえますが、折角なので記念に持ち帰りたいところ。クリスマスマーケットには、グリューワインの屋台がいくつかあって、同じ街の中でもお店によってマグカップの色やデザインが違っています。

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*どこのクリスマスマーケットでもグリューワイン屋さん
 は大繁盛

一番のお気に入りを手に入れるため、クリスマスマーケットをひと通り巡回。シュトゥットガルトでは、この街のクリスマスマーケット風景とポルシェのマークが描かれた、クリーム色のマグカップのグリューワインをいただきました。蜂蜜が入った甘いワイン。ドイツ版のお屠蘇という感じでしょうか。シナモンやクローブ、ジンジャーが効いて、体が芯からホカホカしてきます。

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*まず選んだのはクリーム色のグリューワインカップ
 シュトゥッガルトの街の紋章でもあり
 ポルシェのマークでもある馬のロゴ入り

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*おいしいグリューワインでクリスマス気分も
 盛り上がります

しばらく歩くと今度はかわいい長靴型のグリューワインカップのお店がありました。ここで2杯目。甘さ加減や入れるハーブの種類によってテイストが違うので、味比べも楽しめます。私好みはフルーツの甘さだけで砂糖や蜂蜜は加えられていない甘さ控えめのグリューワイン。立ち上る香りが味の手がかりとなります。
ドイツでは、家庭でもグリューワインを作って飲む習慣があるそうです。そのためこの時期は、薬局でグリューワイン用のハーブのティーパックがよく売られています。グリューワインのボトルをお土産にするのはちょっと重いので、薬局でこのティーパックを買うのもいいですね。

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*有機栽培されたハーブのみを原料としたグリューワイン
 リンゴとオレンジの果実のチップ、ローズヒップ、
 ハイビスカス、クローブ、シナモンがミックスされてい
 ます
 ティーパックを入れたカップに温めた赤ワインを注いで
 5 - 10分たてば出来上がり

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*今回のクリスマスマーケット巡りの記念に持ち帰った
 グリューワインカップ(シュトゥットガルト)

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*グリューワインカップ(ニュルンベルク)

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*グリューワインカップ(ヴェルツブルク)

2013年04月08日

●南独クリスマス巡り⑤シュトゥットガルトのクリスマスマーケット(城戸真由美)

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*シュトゥットガルト中央駅時計台の
 メルセデス・ベンツマーク

シュトゥットガルト中央駅の時計塔の上には、月桂冠の環と陸・海・空の3分野での繁栄を意味する星型を組み合わせたという、メルセデス・ベンツの大きなエンブレムが回っています。そう、このシュトゥットガルトの街は、メルセデス・ベンツやポルシェの本社が今でも置かれている、「自動車」が誕生した街なのです。この街の薬局の多くは、世界中から人や車が集まる国際的な街らしく、ドイツ薬局で決められたApotekaの「A」マークだけでなく、他の諸国の薬局がよく用いている「緑十字」のマークを併せて掲示しています。
このシュトゥットガルトのクリスマスマーケットは世界最大級として、世界3大クリスマスマーケットの一つとされています。ちなみに他の2つもドイツのクリスマスマーケットで、一つは「世界最古のドレスデン」、もう一つは「世界一有名なニュルンベルク」です。

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*ケーニッヒ通りの薬局

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*精巧な街のミニチュア模型の周りを蒸気機関車が走る

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*特設の野外アイススケート場

中央駅から延びるケーニッヒ通りを数百メートル歩くとすぐにクリスマスマーケットの入り口です。広場に特設された遊園地や野外スケートリンクでは、子供だけでなく、大人も満面の笑顔で遊んでいます。ドイツの職人技が光る街のミニチュア模型も素敵です。

歩行者天国のケーニッヒ通りは、さすがにたくさんの人、人、人で前に進むのにも一苦労。あまりに人が多いので、軒先を連ねた露店の裏側を通って、市庁舎があるメイン会場「マルクト広場」に向います。ようやく見えてきた市庁舎は、窓に日付が入れられ、まるで大きなアドベントカレンダーのように飾られています。そして見所は、毎年開催される屋台の屋根のデコレーションコンテスト。光り輝く天使、サンタ、トナカイ、雪だるま・・・小さな屋根の上なのに、どれも等身大以上の迫力ある大きさで、幻想的な夢の世界を創っています。車だけではない、ドイツの技術、芸術に感嘆しつつ、思い思いにクリスマスマーケットを楽しんだ夜でした。

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*世界最大級のクリスマスマーケット

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*アドベントカレンダーに仕上げられた市庁舎と
 クリスマスマーケット

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*幻想的な装飾屋根

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*イエスの降誕を表した装飾屋根

2013年04月01日

●南独クリスマス巡り④ハイデルベルクのクリスマスマーケット(城戸真由美)

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*X'mas気分を高めるエールツ・ゲビルゲ・ピラミッド
 ハイデルベルク中央広場のクリスマス・マーケット

ハイデルベルク街の広場にはクリスマス前のアドベントの期間だけ、木製の露店が立ち並び、楽しいクリスマスマーケットが開かれます。12月のドイツは午後4時過ぎには早くも薄暗くなってきますが、同時に露店の電灯が温かく灯り始め、だんだんと賑やかな雰囲気になっていきます。中央広場には大きなピラミッド型の風車。これまでドイツのお土産屋さんなどで、テーブルの上に置けるような大きさのこの飾りを見ては「何だろう」と思っていましたが、ドイツのクリスマスマーケットのシンボルだったのですね。エールツ地方の特産品ということで、エールツ・ゲビルゲ・ピラミッドと呼ばれているそうです。お土産屋さんのものは風車の羽がキャンドルの熱でゆっくりと回ります。ピラミッドの1階では暖かいグリューワイン(ハーブ入りホットワイン)が売られています。ハイデルベルクのグリューワインのカップは、街の名物のキスチョコに因んで“ハートの形”をした持ち手が特徴です。
5時を過ぎるとほとんど真っ暗に。ハイデルベルク城が幻想的にライトアップされ浮かびあがります。フリードリッヒ5世が、英国生まれのエリザベス・スチュワート妃の誕生日のサプライズのために、たった一夜で造らせたという「エリザベスの門」も素敵に色づいています。門をくぐりお城の庭のクリスマスマーケットに入ると、お魚の何ともいい香りが。焚き火で鯖を炙り焼きしたものが、一人分ずつに切り分けられて売られています。露店ではクリスマス飾り、キャンドル、精油など、目を惹くものがいろいろと並んでいます。さあ、クリスマスの本場ドイツを思いっきり楽しみましょう。

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*各街でデザインが違うグリューワインのマグカップ
 ハートの持ち手をしたハイデルベルクのグリューワイン
 カップは、かわいくて大人気

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*ハイデルベルクの名物「キスチョコ」の本店
 グリューワインカップのハートの持ち手は
 この素敵な落書きに因んでいる

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*ライトアップされたエリザベスの門

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*焚き火で暖をとりながら、
 おいしい鯖焼きをいただきます

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*クリスマス・マーケット名物の大きなクッキー

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*ライトアップされたハイデルベルク城

2013年03月21日

●南独クリスマス巡り③カール・テオドール橋(城戸真由美)

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*ネッカー川対岸から眺めるハイデルベルク旧市街と
 古い橋の冬景色

ハイデルベルクの新市街と旧市街の間を流れるネッカー川が、前日の雨で水かさが増し、今にも氾濫しそうです。その川を見ながら、昨年の初夏、次世代薬剤師を育てる会のシンポジウムで聞いたアッセンハイマー・慶子さんの話を思い出しました。「ドイツの薬局では、大雪、嵐、洪水など災害時に備えて、薬局で備蓄しておく医薬品や備品等が薬局営業法で定められています。そのため各薬局では、抗生剤や解熱鎮痛剤、その他使用頻度の高い医薬品を災害用として常に備蓄しています。」備えあれば憂い無し。日本の薬局でも取り入れる必要がある制度だと感じます。

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*水位が増したネッカー川(ハイデルベルク)

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*橋の建立を命じたカール・テオドール候の像
 像の台座には、ドイツを流れる代表的な4つの川、
 ライン川、ネッカー川、ドナウ川、モーゼル川の神を
 表す彫刻像がとりまいている

ネッカー川にかかる丈夫な橋は、カール・テオドール橋です。地元の人達からは、アルテ・ブリュッケ(古い橋)と呼ばれ親しまれている、ハイデルベルグでは最も古い橋です。この同じ場所に、昔は屋根がある木の橋が架けられていたそうです。ネッカー川の川幅は狭く、激しい川の流れに橋が流されては立て直しの繰り返し。そうした中、当時の領主カール・テオドール候の命により、9代目の橋として、現在の頑丈な石のアーチ橋が1786-1788年にかけて造られたそうです。橋脚の側面には、これまでの洪水時の水かさが年号とともに記されており、この橋がこの200年あまり幾度も激流に耐えてきたことがわかります。この橋のたもとには「人の振りを笑わず、まずは自分の顔を見てごらん!」と金色の鏡を差し出したユニークな猿の像があります。空洞になっている猿の顔の中に、自分の顔を入れておもしろい写真を撮った後は、金色の鏡をなでると金運がアップするといわれています。

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*橋脚に刻まれた洪水位の印

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*「ほら見てごらん!」と金色の鏡を差し出す猿の像

2013年03月02日

●南独クリスマス巡り②ハイデルベルクの薬局のクリスマス飾り(城戸真由美)

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*ボルタレンクリームのディスプレイ
 Apothekeマークの汽車がもみの木の間を走っています

南独クリスマス巡りの初日は、ドイツ最古の大学があるハイデルベルクの街です。旧市街の通りに点在する薬局は、訪れる度に趣向を凝らしたディスプレイで私たちを感動させてくれます。そして今回も素敵!クリスマスツリー、リボン、サンタグッズ・・とクリスマスならではの飾り付けで、通りの人々の目を惹きつけています。ドイツでは、“イチョウ葉”が脳の血液循環をよくする薬として販売されていますが、この“イチョウ葉”の薬にイチョウのクッキー焼き型がおまけについた、かわいいボックスもありました。
店内をちょっと覗くと、どの薬局も相談カウンターに人が立ち並ぶ列ができるほどの繁盛ぶり。処方せん薬をもらうついでに、健康グッズや化粧品をクリスマスプレゼントとしてラッピングしてもらっている人もいます。このラッピングスキル。ドイツでは製薬メーカーが、薬局スタッフ向けにラッピングの研修も開いてくれるそうです。美と健康を願ったクリスマスの贈り物を、確かな品質の薬局で選ぶというのもドイツではよくあることなのでしょう。

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*イチョウ葉のディスプレイ
 イチョウの形をしたクッキー型のおまけ付き

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*家庭用血圧計のディスプレイ

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*旧市街で最も歴史があるスワン薬局のディスプレイ

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*薬剤師の姿のドイツの煙吹き人形
(スワン薬局のディスプレイ)

2013年02月25日

●2012年12月南独クリスマス巡り①(城戸真由美)

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*「クリッペ」と呼ばれるミニチュアの人形の家
 聖書のイエス・キリスト降臨のシーンを再現
(ヴェルツブルクの薬局のディスプレイ)

ドイツの冬は、夜が長く、とても寒いイメージがあります。そんなドイツの冬を明るく華やかに彩る催し、それが各都市で開かれるクリスマスマーケットです。冬のドイツの風物詩として、毎年世界中からたくさんの観光客が訪れます。
クリスマスマーケットの開催期間はクリスマス前の約4週間、 “アドベント”と呼ばれる期間です。アドベントはドイツ語で「到来」という意味。クリスマスの4週間前の日曜日(毎年11月末~12月初めの日曜日)から始まる週を第1アドベント、その次の週を第2アドベント、さらに次の週を第3アドベント、そしてクリスマス直前の週を第4アドベントと数え、街の人々はイエス・キリストの到来をお祝いするクリスマスの準備をしながら過ごします。今回は、第4アドベントの週に、まさにクリスマスムード絶頂のドイツを、ハイデルベルク、チュービンゲン、ロッテンブルク、シュトゥットガルト、ニュルンベルク、ヴェルツブルクと巡ってきました。

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*ニュルンベルク職人広場のクリッペ

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*アドベント・カレンダー風の家
 子供達はアドベント・カレンダーを
 日めくりながらクリスマスを心待ちにする
(ドイツ、チュービンゲン)

2012年07月09日

●シーボルトとアジサイ(吉岡ゆうこ)

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*ハイデルベルクで、ゲーテが歩いたという哲学の道を散歩中にみつけたアジサイ

2012年6月ドイツ薬学視察旅行に行って来ましたが、ちょうど6月はアジサイの時期。ドイツで花咲くアジサイをたくさん見てきました。このアジサイはドイツ人医師シーボルトが、愛する人の名前から「オタクサ」と学名をつけ、ヨーロッパに紹介しました。今ではドイツに限らずヨーロッパ各地で赤や紫の綺麗な花を咲かせ、町の風景に彩りを添えています。長崎では2012年5月26日(土)~6月17日(日)の期間、「ながさき紫陽花祭り」が開催されています。シーボルトの鳴滝塾跡に建つシーボルト像のところにもアジサイがいっぱいです。特に長崎の観光名所である眼鏡橋のある中島川公園には、アジサイの種類もいっぱいで、観光客の目を楽しませてくれます。ドイツに行くにつけ、長崎とドイツやヨーロッパとのつながりを肌で感じます。シーボルト先生ありがとうと感謝です。

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*長崎シーボルト宅跡、シーボルト像を取り囲むアジサイ

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*長崎の観光名所、眼鏡橋のアジサイ

2012年04月05日

●ベルリンのネフェルティティ像(吉岡ゆうこ)

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*ネフェルティティ像のポスターから(部分)

3月ドイツのベルリンに行って来ました。目的は博物館島にあるペルガモン博物館で、トルコのペルガモンから持ち去られたゼウスの祭壇の写真を撮ることと、新博物館にあるエジプトから持ち去られたネフェルティティの胸像の写真を撮ることでした。残念ながらネフェルティティは撮影禁止になっていて、その美しい姿を眺めることしかできませんでした。ネフェルティティはエジプトの美の象徴です。ネフェルティティは、エジプト新王国時代のファラオだったアメンホテプ4世の正妃で、この胸像は紀元前1345年に製作されたものとされています。エジプト時代、太い濃いアイラインは、化粧品としてだけではなく強い日差しや眼病から目を保護する医学的な効用も備えていました。顔料である黒い「メスデメト」の材料である方鉛鉱や輝安鉱には殺菌作用やハエを防除する効力があり、古代エジプトの眼炎には「メスデメト」が薬として使われていました。古代エジプトの目のお化粧は、美しさとともに目を守るものであり、生活に欠かせないものでした。

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*博物館島の建物はギリシャ神殿の様式

ベルリンはドイツの首都であり大都市です。街には24時間営業の薬局もあり、いつも行く南ドイツとは少し違っていました。鉄道も発達し、Sバーン、Uバーンがくまなく張巡されています。そのような大都会にいても薬局はここだよという電柱をいたるところで目にしました。薬局の看板が一番目立っていたように感じます。ドラッグストアのDMにはいると、やはりメールオーダの機会が設置してありました。

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*ベルリンのマスコット~ベアをアレンジした薬局の看板

2012年01月05日

●ドイツの高齢者施設への薬の供給(吉岡ゆうこ)

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*患者毎の薬のセット箱(曜日毎に朝昼夕寝る前と区分)
 曜日毎に取り外しができる

2011年6月のドイツ薬学視察旅行では高齢者施設にも行ってきました。被保険者から保険料を徴収してサービスを提供するという介護保険がある国は、ドイツ、日本、韓国の3ヶ国しかありません。ドイツは1995年に在宅介護給付から始まり、 1997年に施設介護給付が開始されました。日本の介護保険はドイツを参考にし、2000年に在宅と施設サービスが同時に開始されました。保険制度という意味ではドイツの介護保険を参考にしているのですが、中身については医療保険制度の違いもあり、大きく異なっています。高齢者のいるところに薬あり、薬の供給体制や管理はどうなっているのだろうと、ハイデルベルク郊外にある民間の高齢者福祉施設を視察してきました。
ドイツには公営と民間の高齢者施設があります。公営の高齢者施設の薬の供給は、夜間の輪番制と同じく、地域の薬局が輪番制で行っています。2~3 年に1回、10ヶ月間担当します。民間の場合は、薬局と直接契約します。最近では日本と同じく民間の施設が増えてきています。施設から処方箋が来て、あるいは取りに行って調剤し、薬を配達します。ドイツの薬の供給は、薬の箱を開封せずに渡す「箱渡し制」ですので、そのまま箱(30錠単位、50錠単位、 100錠単位)で渡します。薬局の施設への薬の供給は処方箋による保険調剤であり、日本のような居宅療養管理指導費はありません。施設において箱のまま届けられた薬を患者毎にセットするのは介護士の仕事です。ドイツの介護士は3年間の専門の教育を受ければ薬の管理を行うことができ、その専門の教育を受けた介護士が施設の中で薬の管理、与薬を行っています。もちろん看護師もいます。薬局は半年に1回、施設のスタッフに薬の教育をする義務があり、施設との契約が終了するときには、薬の管理がきちんと行えているかどうかチェックする義務もあります。視察した施設のナースステーションには、0.5畳ほどの薬の保管室があり、そこで患者毎の薬が管理されていました。
このような、実際に薬を与薬する介護士に対する薬の教育が制度化されていること、薬局がそのチェック役を担っていることなど、参考になりました。

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*ナースステーションに医薬品管理室が備えられている

2011年08月06日

●ドイツのメイルオーダー(吉岡ゆうこ)

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*europa apotheekの割引チラシ

ドイツ薬学視察旅行2011ではドイツで行われているドラッグストアによる処方箋のメイルオーダーも見てきました。
2000年頃から、欧州ではオランダやスイスがオンライン薬局を合法化し、国境を越えた郵便・配送サービスによる医薬品の販売を始めました。ドイツでもドラッグストアチェーンであるdm(dm-drogerie marrkt)がその窓口となり、処方箋の受付を行っています。ドイツのドラッグストアは、日本のドラッグストアと違って、薬局以外で販売してよいその他のカテゴリーに属する医薬品やハーブ類、化粧品やヘルスケア商材は取り扱えますが、ドイツで言うところの要処方薬や薬局指示薬(OTC医薬品)は取り扱うことができません。そのdmが、処方箋薬やOTC医薬品のメールオーダーを始めました。dmの店内には、薬の申込み封筒を備えたPharm Punktという薬の注文ステーションが設置されています。申込者は封筒に必要事項を記入し、処方箋を同封します。その封筒はdmの提携先のeuropa apotheekに行き、調剤された薬はおよそ3日後(72時間以内)にdmに届きます。あるいは自宅に郵送されます。健康保険による薬の一部負担金(薬代の1割、最低5ユーロ最高10ユーロ)は変わりませんが、生活者にとってお得なのは、薬代のキックバックがあったり、薬局でしか買えないOTC医薬品を割引価格で買えたりすることです。ドイツのOTC医薬品は自由価格ですが、薬局間による値引き競争はほとんど行われていません。
その様な中、ドイツでは2004年に医薬品の郵送・通信販売を認める法改正が行われ、一定の条件を満たした薬局はオンライン薬局を開設できるようになりました。日本でも第3類医薬品以外の医薬品のネット販売が取りざたされていますが、ドイツではいち早く法整備が進められ、薬局でも処方箋薬、OTC医薬品ともにメイルオーダー可能です。
今回はdmのPharm Punktに行って実際に見てきました。写真のDPEカウンターのようなものでした。

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*dmのPharm Punkt

2011年06月21日

●ゼーリンゲンシュタットの修道院跡と薬草園(吉岡ゆうこ)

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*薬草園から見た修道院跡

2011年6月6日~11日の6日間、ドイツ薬学視察旅行にでかけました。視察地はハイデルベルク、チュービンゲン、ロッテンブルク、マンハイム。視察先はドイツ薬事博物館、薬局、大学病院薬局、大学薬学部、修道院、薬草園、高齢者福祉施設でした。季節のよい6月でしたので、朝は4時くらいから明るくなり、夜は10時くらいまで外が明るく、時間を有効に使うことができました。

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*昔の修道院の薬局の様子

今回、フランクフルト近郊、ゼーリンゲンシュタット(Seligenstadt)にある旧ベネディクト派修道院跡にも行きました。中世では、キリストが薬剤師であり、修道院内で薬草が栽培され、修道士、修道女達が薬を調合し施薬していました。修道院の薬局があった場所には、ドイツ薬事博物館から提供されている、古い調剤棚や薬壺、調剤機器、ハーブなどが飾られていました。修道院跡地には薬草園が復元され、約100種類ほどの薬草が効能別に栽培されています。ちょうどラベンダーの開花時期で、ラベンダーの花の紫がとてもきれいでした。薬草園ではジギタリスの花も咲いていました。

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*展示の古い薬局

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*ジギタリスの花

2007年12月03日

●ドイツ●ロッテンブルクにて「薬局の日」(吉岡ゆうこ)

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*「Central Apotheke」

2007年6月の第2木曜、ドイツ「薬局の日」。今年はドイツ薬剤師会が「薬局の日」を制定してから10年目に当たる節目の年です。是非一度は見に行きたいと思っていたドイツ薬局の日を、今年は念願叶い間近に見てきました。訪ねたのはドイツ在住の日本人薬剤師であるアッセンハイマー慶子さんが経営する「Central Apotheke」。スイス国境近くのロッテンブルクという町の中心にあります。
今年のテーマは「メタボリックシンドローム」。店の前にテントを広げ、血糖値、コレステロール値、血圧の無料測定会を開いていました。ドイツでは有料にてコレステロールの測定も薬剤師が行っています。この日のイベントについては新聞の1面にドイツ薬局の日が解説してあり、地域の薬局が名前を連ねて広告を載せたり、それぞれの薬局独自で広告を載せたりしていました。 
朝の開局時8時半から、店の前にはお客さんがぞろぞろ。ロッテンブルクに住む高齢の方々が次々と血糖値やコレステロール値を測定されていました。そして井戸端会議の始まり。ちょうど店の前にある広場の菩提樹は花が満開中。ヨーロッパでは、菩提樹は千の用途をもつ木として古くから知られ、神聖な木として崇められてきました。葉が美しく、花の香りがよいので街路樹として好まれているそうですが、ほんとうにそうでした。訪ねた6月の第2週、ドイツのどの町に行っても菩提樹の花が満開でその甘いにおいが町中漂っていました。

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* 訪ねた6月は季節もよく菩提樹の花が満開
  薬局前広場は甘い香りに包まれる

慶子さんのお店では薬局の日のイベントに積極的に取り組んでいるのですが、ドイツの薬局全てがそうではないということが今回わかりました。イベントを実施するにはお金がかかりますので、取りやめているところも増えているそうです。というのもドイツの薬局経営は現在非常に厳しくなっています。2005年、いままで処方せんで保険召還されていた日本で言うところの「OTC類似薬」が保険召還されなくなり、OTC薬として全額患者の自己負担になりました。その影響は重いようで、いつも行くお店のオーナーたちは口を揃えて、処方せん枚数が減ったと嘆いておりました。今ドイツは「ドイツキリスト教民主同盟」の女性首相「アンゲラ・ドロテア・メルケル」氏の政権になっていますが、健康保険制度改革に関しては薬局に対する風当たりがますます厳しくなっているそうです。いつも行くドイツ薬事博物館のある都市ハイデルベルクで、薬局がなくなっているところがあり、つぶれたの?と言う感じでした。ドイツは日本の2、3年先を行っているようで、厳しい環境を見せつけられました。
そんな中、少しでも薬局の意義を住民の方に伝えましょうとがんばっておられる慶子さんの姿にはいつも心をうたれます。日本でもがんばらなくてはというエネルギーをもらって帰ってきました。

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*お店の前に「街角メタボ度チェック所」設置

2007年05月07日

●イタリア・ドイツ●医学、薬学のシンボル(吉岡ゆうこ)

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    *ローマ・トレビの泉

欧米では医学、薬学のシンボルとしてアスクレピオスの杖とヒギエイアの杯が使われています。
医学のシンボルとして、欧米では古くから「アスクレピオスの杖」が用いられ、その杖には一匹の蛇がからまり、健康、不老、長寿などを象徴しています。薬学のシンボルとしては「ヒギエイアの杯」が最も多く用いられていますが、乳鉢乳棒、天秤、アスクレピオスの杖なども用いられています。

<アスクレピオス>
アスクレピオスはギリシアの英雄で医術の祖であり、のちに神としてまつられました。ギリシャ神話のアポロンとコロニスの子とされています。人に治療や薬事の技術を伝授し、医術に長じ、慕ってくる患者のために神殿を建てました(アスクレピオス神殿)。これが最初の病院と言われるものです。地上のすべてを知るヘビに学んだ薬草や催眠法を用いて病人を治癒しました。妻エピオネとの間に四人の娘を持ち、パナケイアPanakeia、アケソーAkeso、ヒギエイアHygieia、イアソーIasoといい、いずれも健康、治癒などの意味があります。彼は病人の診療で山野を歩き回るとき、丈夫な太い棒を杖として用いました。 その杖はカドゥケウスとよばれその杖には1匹の聖蛇がまきついています。蛇は守護、魔力、神秘、健康、不老、長寿、不死などを象徴しています。患者の患部を蛇がなめるとその魔力で病気が治ったといいます。カドゥケウスの杖とその杖からみついたヘビのマークはWHOのマークでもあります。欧米では救急車の車体マークにもなっています。

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*イタリア救急車のマークに使われている
 カドゥケウスの杖とヘビ

<アスクレピオスヘビとヒギエイアの杯>
アスクレピオスヘビは、古代ギリシア人やローマ人が神をたたえて建立した病院をかねた神殿で飼育されていました。娘であるヒギエイアは父からの信頼が厚く、聖蛇に餌を与える役を担っていました。ヒギエイアがヘビに餌を与えるときの杯を「ヒギエイアの杯」と称します。

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*左/ドイツの薬局のドアノブ
 右/ドイツの薬局の看板~マークはApoteke(アポテーカ:薬局)のAとヒギエイアの杯とアスクレピオスヘビです。

イタリアの薬局では十字のマークとヒギエイアの杯を組み合わせた看板を利用しています。そしてイタリアの薬剤師さんは胸に薬剤師バッジをつけていたのですが、そのバッジの模様はカドゥケウスの杖とアスクレピオスヘビです。
イタリアのトレビの泉はとても有名ですので、テレビや写真でごらんになったことがあると思うのですが、その正面右手に建っている彫像の一つがヒギエイアです。確かにヒギエイアの杯をもち、そこにヘビが巻き付いていました。
(ドイツ2005年2月/イタリア2006年8月取材)

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    *"トレビの泉"のヒギエイア像
     ヒギエイアの杯とからみつくヘビ

2007年03月23日

●ドイツ●アウクスブルクの薬草園(城戸まゆみ)

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バイエルン州の街、アウクスブルクは大富豪フッガー家による貿易、銀行業務で1516世紀に最も栄えた街です。1514年にフッガー家が救民のために建てた家賃2マルク(約200円)/年の「フッガー屋敷」は世界最初の社会福祉施設です。かつてはモーツァルトの祖父も住んでいたという長家風の団地は、今も当時の家賃のまま福祉施設として使われており、建物には歴史を感じますが、ゴミひとつ落ちていない状態。アウクスブルグは街の歴史も古く、1985年に街の創立2000年祭が行われました。そのとき新しく整備されたに動植物園に薬草園(アポテーカーガーデン)を作ったのが、HOF薬局のアポテーカー、Dr.ハックシュピールです。

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*アポテーカーガーデン全体図とDr.ハックシュピール

Drが私に教えたことが「薬のクオリティを見極める目は経験でしか養うことができない」。そして薬草園を薬剤師が自然観察眼を養う修業・研究の場、そして市民が憩う場として作りました。それから20年、70歳を迎えた今も、この薬草園はDr.ハックシュピールがほとんど一人で手入れや管理を行っているそうです。これを口に入れてごらん、と悪戯っぽく笑いながらDr.ハックシュピールが差し出したハーブを口に入れると徐々に強烈な苦みが口に広がりました。これはニガヨモギ、苦味健胃薬だから脂っこいものを食べた後に摂るといい、ただし1日中口の中は苦いけどね、こんな感じでユーモアとウィットに富んだDrの薬草園ガイドが始まりました。

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*左/ユーカリの木 右/トウゴマ

<ユーカリの木>ユーカリの葉の表面は全部太陽に向かっています。ユーカリは50メートル四方の土地から水分をぐんぐん集め、その水分を葉から蒸発するそうです。その性質を利用してマラリアが発症しやすい沼地に植えることで、湿地が乾燥し蚊がいなくなり、マラリア感染が予防されるのだそうです。また、ユーカリの精油は血圧を上昇させますので、アロマテラピーでは注意が必要です。

<トウゴマ>薬草園ではトウゴマがイガイガの実をつけていました。実の中の4つの種は、測ると4つとも全く同じ重さだそうです。この種を搾って作る油が下剤のヒマシ油です。油は医薬品ですが、残った油粕にはリシンという青酸カリの10000倍の猛毒が含まれます。

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*左/ホップ 右/ケシ

<ホップ>アウクスブルクがあるバイエルン州の公式飲料はビール。そしてビールはホップから作られます。ホップには雄花と雌花がありますが、精神に安らぎをもたらす効果があるのは雌花のみ。バイエルン州ではアルプスから乾燥した風フィンが吹き込むため喉が渇きます。バイエルンの人々は、ホップから作られたビールで喉の渇きと心身をリラックスさせているのです。

<ケシ>ケシには観賞用のケシ(ポピー)とアヘンが採取できる種類のケシがあります。アヘンが採取できるケシは、茎を葉が巻き込んでいるのが特徴です。ここで見たケシは花が終わり実をつけていました。葉の根元の形状を観察すると、しっかり茎を巻き込みまさしく日本で言うところの違法ケシでした。

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*ジャーマンカモミール と ローマンカモミール

<ジャーマンカモミール と ローマンカモミール>西洋ハーブの代表ともいえるカモミールは、紀元前3000年もの昔から消炎、鎮静作用を期待して医療に用いられた薬草です。カモミールには大きく分けてジャーマン種とローマン種があります。Dr.ハックシュピールは、ローマン種は偽物ときっぱり断言。外見ではどちらか見分けがつきませんが、花頭をポキリと折り、茎に空洞があればジャーマン種です。シーボルトはカミツレとして日本にジャーマン種カモミールを伝えています。花から抽出された精油は青緑色、薬効成分は“アズレン”です。皆さんも青いアズレン配合の胃薬やうがい薬、あるいは目薬をご覧になったことがあるでしょう。

5月にケシの花を見かけると葉の形状を観察する、6月にカモミールが咲けばその花頭を折ってみる、道端の草花は有効な、そして危険な薬なのです。薬草を栽培するは難しいかもしれませんが、自生している薬草を観察することで薬剤師としての"感性の刃"を研ぎ続けていきたいものです。
(2005年8月取材)

2007年03月22日

●ドイツ●薬草魔女ビッケルさんを訪ねて(城戸まゆみ)

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*ビッケルさんのポストカード

「ああ、気持ちがすうっとする!」 ドイツ薬事博物館に来ると全身に清々しい空気が流れ込んだような何とも不思議な感覚になります。例えると新年を迎え、神社に初詣でするときの気分に似た感じでしょうか。薬事の神様の下で、雑念が払われ、気持ち新たに薬学人としての道を歩む決意や喜びが湧いてきます。欧州視察の最初の儀式として、ハイデルベルグ城の芳香なアイスワインをお神酒の代わりにして身を清め、薬事博物館前の噴水にコインを投げ入れてお参り。今回もすばらしい出会いがありますように・・・。

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*マウルブロン修道院

視察3日目、世界遺産“マウルブロン修道院群(1147年建立)”。高い石の塀に沿って歩き、アーチ型の門をくぐると、そこには中世の街並が広がっていました。ヘルマンヘッセの小説に描かれているマロニエの木、噴水、美しい修道院。ゆっくり見て回りたいけれど、限られた時間。小走りで向かった先は、門のすぐそばに立つハーブのお店、現在の薬草魔女としてTVやマスコミでもその名を知られるビッケルさんのお店です。薬局でPTA(薬学技術アシスタント)として働くうちに芽生えたハーブへの興味、そしてとうとう自分でハーブ園を作り、研究に打ち込んだというビッケルさん。著書“薬草魔女のナチュラルライフ”は邦訳され、日本でも愛読されています。ビッケルさんに会えますように・・・。入り口で魔女人形の出迎えを受け、お店のスタッフさんにビッケルさんに会いに日本から来ましたと告げると、「彼女は今山にハーブを摘みに行っている」との答えです。山にハーブ摘みですって、素敵!この時何故か、私はがっかりはしませんでした。ハーブティ、ハーブの種、精油、明るい図柄のレシピ本・・・所狭しと並べられた薬草グッズにすっかり満足していたからでしょうか。ラベンダー、マリーゴールドなど、ハーブたちの色が生き生きとしているのです。野生の草の生命力と癒し。あれもこれもたくさん買い込んで、さあ集合時間、とその時、ラベンダーの花を両手いっぱいに抱え込んだビッケルさんがお店に入ってきたのです。劇的な瞬間、なんという幸運、薬事の神様に心から感謝!
(2005年2月取材)

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*薬草魔女ビッケルさんのお店

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*憧れのビッケルさんと出会えました

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*お店のハーブティ2種/左がHexenzauber Tee(魔女の魔法)右がWohlfuehl Tee(快適ブレンド)

2007年03月21日

●ドイツ●ハイデルベルクのドイツ薬事博物館にて(城戸まゆみ)

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  *ハイデルベルク城の中にあるドイツ薬事博物館

「ドイツ薬事博物館で医学・薬学の歴史とルーツを知る」まずここからドイツ薬学修業は始まります。そこで今回はドイツ薬事博物館を中心に報告します。ドイツ薬事博物館では、紀元前古代4代文明時代からの医療を観ることができます。メソポタミアやエジプトでは「病や死は神の怒りにより体に悪魔が憑いたもの」と思われていました。悪魔を体から追い出すために動物の糞や耳垢など悪臭のでるもの、吐剤、下剤などが薬として用いられます。とはいっても植物、動物、鉱物などの薬の種類も500種類以上と豊富でした。その中には、芥子や甘草など、今も薬として使用されるものも多数あります。エジプトで毎朝“太陽神ラー”のために焚かれたという「乳香」やミイラに使われた「没薬」も博物館に展示されています。この乳香と没薬は、聖書にも登場し、イエス生誕時、東からきた賢者たちがイエスに捧げたものとしても知られています。現在の日本でも婦人科系の漢方薬やアロマテラピーのオイルとして使われています。

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*ドイツ博物館の案内掲示板

博物館の通路に沿って時代を進むと、ギリシャ時代に移り、蛇に教わったという医学の神アスクレピオスから医学の父ヒポクラテスの時代となります。医学や薬学の専門家も現われ、異国からの薬が高い値段で売薬されます。ヒポクラテスは、病は体液のバランスが崩れた状態であるという「四液体説」を説き、ハーブや運動療法、養生のための食事療法で自然治癒力を引き出し、体液バランスを調整する治療を行いました。これがローマの医学者ガレノスによって引き継がれていきます。また、ローマでは万病に効く秘伝の霊薬として「テリアカ」が作られます。本来は全ての毒を消す「万能解毒剤」で、毒をもって毒を制すという言葉通り、「毒蛇の肉」も配合されていました。その他に多種類の薬草や動物の骨、鉱物など、いろいろなものが混合されていたようです。博物館では有名な「皇帝ネロのテリアカ」について秘伝成分の一部が皆さんに伝授されました。この「テリアカ」、近代日本に西洋医学を伝えたシーボルトの慣用薬でもありました。

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*ビーダーマイヤー様式の薬局調剤室

中世になると、製薬や調剤は修道院や城の地下などで極秘に行われるようになります。植物学の祖、ヒルデガルトの時代です。修道院は薬草園を所有し、薬草を自家栽培していました。薬事博物館では修道院や地下室にあった調剤室をそのまま展示してあります。当時、薬は高貴なものとして、りっぱな陶製の薬壷に大切に入れられていました。今でもドイツの薬局では、アンティークな薬壷がディスプレイとして大切に飾られていますし、通常使っている薬瓶までもがディスプレイのように整然と並べられています。
さらに薬の歴史を近世まで追っていくと薬効成分を抽出し、さらに化学合成する技術が発展します。それとともに自然療法から化学療法を中心とした医療に移っていきます。

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*薬の展示室にあるテリアカ

現在の医学や薬学はこのような先人たちの知恵が受け継がれてきたものなのです。薬学部が設立されるまでは、薬学の知識は師から弟子へと伝えられました。アポテーカーになるためには、自然学のエキスパートとして修業を積まなければなりませんでした。薬草園で薬草を栽培することがアポテーカーになるための最初の修業だったそうです。5年以上、薬草園での修業を積み、78年かけて知識や技術を習得し、師匠からアポテーカーとしての免状が渡されていました。「薬のことをよく知っているからこそ、薬を大切に扱うことが出来る。また、その薬が規格にあったものかどうかは薬局方に基づいた試験法で判断できるが、そのクオリティを見極める目は経験でしか養うことができない。」と、今も薬草を自家栽培しているHOF薬局のアポテーカーが私に教えてくださいました。そしてハーブを扱う一人の女性薬剤師をうちの魔女です、と紹介されました。今、ネオフィスト研究所に入ると、ラベンダーやメリッサなど、植木鉢のハーブがほのかに香ります。魔女薬剤師としての修業の第1歩が始まりました。
(2004年8月取材)

2007年03月19日

●ドイツ●魔女薬剤師になりたい(城戸まゆみ)

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*ハイデルベルクの街並み

「自然界に存在するあらゆるもの食物、動物そして鉱物までもが薬となり、そしてその自然の最も優れた観察者が薬剤師の祖である」3度目のドイツ視察、ハイデルベルグにある薬事博物館で聞いた薬事専門員さんの言葉です。
ハーブ療法やホメオパシーといった自然療法が医師による処方薬として用いられ、それらの薬が薬局で品質を管理され、薬剤師の手によって一般の市民に渡されるドイツ。
そのドイツ自然学の歴史の中に聖女ヒルデガルト(10981179)がいます。実は彼女、日本では「薬草魔女」というニックネームで呼ばれています。幼いときから神の声がきこえ、修道院の院長となります。そこで、ヒルデガルトは、教皇から司教、修道女、平信徒(これには皇帝や王族もいれば、文盲の庶民もいます)に至るまで広い層の人々の相談に乗り、神の名において彼らに警告を発し、今日の言葉で言えば、すなわちカウンセラーとして働きました。

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*マインツの古い薬局・歴史の重みを感じます

また彼女の自然観察力は驚異的だったといいます。その自然研究をもとにハーブの効能と使い方について記述したいくつかの本は、当時の専門家に注目され、ヒルデガルト・ルネッサンスという大ブームを生みました。秘密めいた修道院でカウンセリングを行い、そして必要なときは自然からえた薬を調合して渡す。
これがヒルデガルトの「魔女ぶり」です。その薬の効能は、いったいなんだったのでしょうか? 神への信仰と驚異的な自然観察から作られた薬は、「血圧を下げる」というように味気なく、ただ症状をとるだけのものではなく、その効能によって相談者の苦悩を癒し、人生を明るくするものだったと思います。映画シュレック2に登場する魔女は、シュレックに「ハンサムになる薬」を渡し、父君に「惚れグスリ」を渡します。魔女のもつ薬品棚には、それこそ人生を乗り切るための薬がずらりと並んでいるのです。

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*ヒルデガルトが飾ってあるフッセンの薬局のディスプレイ

「ぜひ魔女になりたい」ドイツでそう思いました。その時一つの出会いがありました。アウグスブルグでの通訳の方(日本人)がドイツの母と慕っている方が、ドイツ各地で薬草の先生をしているというのです。現在の薬草魔女です。次回のドイツ視察では、この91歳の薬草魔女様と出会い、そして自然への観察力を伝授していただきたい、そして「自然の最も優れた観察者=魔女薬剤師」となるための修行を積んできます。
(2004年8月取材)

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*ミュンヘンのハーブ薬局