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2007年03月19日

●ドイツ●魔女薬剤師になりたい(城戸まゆみ)

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*ハイデルベルクの街並み

「自然界に存在するあらゆるもの食物、動物そして鉱物までもが薬となり、そしてその自然の最も優れた観察者が薬剤師の祖である」3度目のドイツ視察、ハイデルベルグにある薬事博物館で聞いた薬事専門員さんの言葉です。
ハーブ療法やホメオパシーといった自然療法が医師による処方薬として用いられ、それらの薬が薬局で品質を管理され、薬剤師の手によって一般の市民に渡されるドイツ。
そのドイツ自然学の歴史の中に聖女ヒルデガルト(10981179)がいます。実は彼女、日本では「薬草魔女」というニックネームで呼ばれています。幼いときから神の声がきこえ、修道院の院長となります。そこで、ヒルデガルトは、教皇から司教、修道女、平信徒(これには皇帝や王族もいれば、文盲の庶民もいます)に至るまで広い層の人々の相談に乗り、神の名において彼らに警告を発し、今日の言葉で言えば、すなわちカウンセラーとして働きました。

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*マインツの古い薬局・歴史の重みを感じます

また彼女の自然観察力は驚異的だったといいます。その自然研究をもとにハーブの効能と使い方について記述したいくつかの本は、当時の専門家に注目され、ヒルデガルト・ルネッサンスという大ブームを生みました。秘密めいた修道院でカウンセリングを行い、そして必要なときは自然からえた薬を調合して渡す。
これがヒルデガルトの「魔女ぶり」です。その薬の効能は、いったいなんだったのでしょうか? 神への信仰と驚異的な自然観察から作られた薬は、「血圧を下げる」というように味気なく、ただ症状をとるだけのものではなく、その効能によって相談者の苦悩を癒し、人生を明るくするものだったと思います。映画シュレック2に登場する魔女は、シュレックに「ハンサムになる薬」を渡し、父君に「惚れグスリ」を渡します。魔女のもつ薬品棚には、それこそ人生を乗り切るための薬がずらりと並んでいるのです。

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*ヒルデガルトが飾ってあるフッセンの薬局のディスプレイ

「ぜひ魔女になりたい」ドイツでそう思いました。その時一つの出会いがありました。アウグスブルグでの通訳の方(日本人)がドイツの母と慕っている方が、ドイツ各地で薬草の先生をしているというのです。現在の薬草魔女です。次回のドイツ視察では、この91歳の薬草魔女様と出会い、そして自然への観察力を伝授していただきたい、そして「自然の最も優れた観察者=魔女薬剤師」となるための修行を積んできます。
(2004年8月取材)

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*ミュンヘンのハーブ薬局