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2012年01月05日

●ドイツの高齢者施設への薬の供給(吉岡ゆうこ)

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*患者毎の薬のセット箱(曜日毎に朝昼夕寝る前と区分)
 曜日毎に取り外しができる

2011年6月のドイツ薬学視察旅行では高齢者施設にも行ってきました。被保険者から保険料を徴収してサービスを提供するという介護保険がある国は、ドイツ、日本、韓国の3ヶ国しかありません。ドイツは1995年に在宅介護給付から始まり、 1997年に施設介護給付が開始されました。日本の介護保険はドイツを参考にし、2000年に在宅と施設サービスが同時に開始されました。保険制度という意味ではドイツの介護保険を参考にしているのですが、中身については医療保険制度の違いもあり、大きく異なっています。高齢者のいるところに薬あり、薬の供給体制や管理はどうなっているのだろうと、ハイデルベルク郊外にある民間の高齢者福祉施設を視察してきました。
ドイツには公営と民間の高齢者施設があります。公営の高齢者施設の薬の供給は、夜間の輪番制と同じく、地域の薬局が輪番制で行っています。2~3 年に1回、10ヶ月間担当します。民間の場合は、薬局と直接契約します。最近では日本と同じく民間の施設が増えてきています。施設から処方箋が来て、あるいは取りに行って調剤し、薬を配達します。ドイツの薬の供給は、薬の箱を開封せずに渡す「箱渡し制」ですので、そのまま箱(30錠単位、50錠単位、 100錠単位)で渡します。薬局の施設への薬の供給は処方箋による保険調剤であり、日本のような居宅療養管理指導費はありません。施設において箱のまま届けられた薬を患者毎にセットするのは介護士の仕事です。ドイツの介護士は3年間の専門の教育を受ければ薬の管理を行うことができ、その専門の教育を受けた介護士が施設の中で薬の管理、与薬を行っています。もちろん看護師もいます。薬局は半年に1回、施設のスタッフに薬の教育をする義務があり、施設との契約が終了するときには、薬の管理がきちんと行えているかどうかチェックする義務もあります。視察した施設のナースステーションには、0.5畳ほどの薬の保管室があり、そこで患者毎の薬が管理されていました。
このような、実際に薬を与薬する介護士に対する薬の教育が制度化されていること、薬局がそのチェック役を担っていることなど、参考になりました。

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*ナースステーションに医薬品管理室が備えられている