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2008年01月30日

●エジプト●アレキサンドリアにて(吉岡ゆうこ)

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*地中海に面して建つ「カイトベイ要塞」
(ここにファロスの灯台が建っていた)

2007年12月、エジプト視察旅行に行ってきました。目的は薬の歴史探訪です。これまでヨーロッパにおける医学、薬学の歴史を探訪してきましたが、そのさらに過去をさかのぼると、行きつく所はなんと言っても古代エジプト。エジプトで薬の原点を垣間見てきました。
今回はまず現在の薬局、薬剤師の話しです。医療制度や薬局の仕事については余り詳しく調べることは出来なかったのですが、薬局の薬剤師さんや現地ガイドさんに聞いた話しでまとめてみます。エジプトの薬学部は5年制です。卒業後政府の病院で1年間研修を受けて国家資格を取ります。ちなみに医学部は6年制、歯学部は5年制です。国立大学と民間の大学があり、国立大学の授業料は無料、ただし日本でいう高校の成績で入る大学が決まるそうです。

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*「ヘビとヒギエイアの杯」と「ファロスの灯台」を
 組み合わせたアレキサンドリア大学・薬学部のマーク

地中海に面したアレキサンドリアにあるアレキサンドリア大学の薬学部の校舎の壁面には、アスクレピオスのヘビとヒギエイアの杯が描かれていました。それと今はなき、世界7不思議のひとつに入るファロスの灯台(クレオパトラの時代にはあった全長134mの巨大な灯台)も描かれていました。紀元前300年ごろに建造され、紀元後の3回の地震により1323年に完全に倒壊しました。世界7不思議のなかで現在唯一残るギザのピラミッドについで長く存続した建造物です。アスクレピオスのヘビとヒギエイアの杯はギリシャ時代の話しですので、古代エジプト時代のものではありませんが、現在のエジプトの薬局のマークになっています。古代エジプトの遺跡や壁画にもヘビは描かれています。ヘビは古代エジプトの時代から神聖な生き物でした。
古代エジプトは多神教の国家で、様々な神様がいたのですが、トキ(鷺)の頭をしたトト神は古代エジプト文字であるヒエログリフ(象形文字)の発明者とされ、学問や知恵の神様として信仰されていました。このトト神は目を治療することから、医者の守護神でもありました。トト神がまわりにさそりとへびの巻き付いたウアス杓(しゃく)を握っている壁画が残っていて、これがギリシャ神話の医神アスクレピオスの原型ではないかと言われています。このトト神がカイロ大学の歯学部の校舎に刻まれていました。ウアス杓とはエジプトの神や王がしばしば手にしている杖のことです。

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*みやげもののパピルスに書かれた「トト神」
 上の文字はヒエログリフ

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*カイロ大学・歯学部の「トト神」のマーク