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2011年10月24日

●アヘンケシ<前半>(城戸真由美)

和名:芥子(ケシ科の一年草)
英名:Opium poppy
ラテン名:Opium Thebaicum
学名: Papaver somniferum、Papaver setigerum、Papaver bracteatum
成分:モルヒネ、コデイン、テバイン、パパベリン等のアヘンアルカロイド
主な薬効:鎮痛・鎮静・催眠・鎮咳・止瀉
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*アヘンケシ(東京都小平市の東京都薬用植物園)

◇かけがえのない魔の薬“アヘン”
麻薬としてよく知られているアヘンやモルヒネは、ケシから採集されます。ケシはケシ科の一年草で、ギリシア、トルコから西南アジアが原産とされています。その最も強い薬効部位は、花が散った後に残る“さく果(ケシ坊主)”の表皮部分から採れる乳汁にあります。
ケシの花びらが散り、10日程待った後、さく果の表面にだけ傷をつけ、滲み出た白い乳汁をヘラなどでかき集めます。それを加熱乾燥し、半固形状にしたものが “アヘン”で、それから単離精製されたものが、医療用麻薬として用いられているモルヒネです。
麻薬は、適切に用いれば、鎮痛薬として、癌などの耐えがたい痛みから人を救う、かけがえのない恵みの薬となります。

◇トルコの町アフィヨンのケシ畑
古くからアヘンケシの栽培を続けている“アフィヨン”という街が、トルコにあります。世界自然遺産の奇岩群として有名なカッパドキアから、石灰棚温泉のパムッカレに向かう途中で、アフィヨンのケシ畑に立ち寄ることができます。街名“アフィヨン”は、トルコ語でアヘンを意味する言葉。中国でアヘンのことを「阿芙蓉(あふよう)」と呼ぶのは、このトルコの街名に由来しています。
ケシの花期は、5~6月ごろ。アフィヨン・ロードと呼ばれる街道沿いには、赤、紫、白の彩り豊かな花が一面に咲き誇り、あやしくも壮観な眺めだといいます。その景色を見たくて、トルコを訪ねたのは3月中旬。当然のごとく、ケシの花は一切見当たらず、よく肥えた畑がただ広がるのみでした。それでも幸いなことに、ドライブインだけは開いていました。アフィヨンのドライブインは、ケシ粒とはちみつがかかった、ヤギのヨーグルトが味わえます。この土地ならではのヨーグルトと生ザクロジュースで一休みしながら、花がないこと残念がっていると、とても親切なトルコの人。「ちょうどケシの苗を植えている畑がある」と案内してくれました。足早について行くと、元気なおばさま達が大勢で、陽気に苗植え作業をしています。ミレーの名画のようなその光景を眺めていると、明るく手招きし、畑の中に呼んでくれました。ビニール袋にたくさん入っているのは、10cmほどのアヘンケシの苗。それをひとつひとつ丁寧に手で植えていきます。100m程離れたところにある監視棟の存在に、少しおびえつつ、私も一緒に苗植え。貴重な体験をした思い出です。

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*ケシの種粒とトルコ名産のはちみつがたっぷりとかかった濃厚なヨーグルト(アフィヨンのドライブインにて)

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*アフィヨンのケシ畑での苗植え作業の様子

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*アヘンケシの苗


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